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「えゝ、このたびこちらへ戻りまして、仲通りに開業しました高間房一ですが、つきましては一寸御挨拶に――」
「まあ、いゝでせう。せつかくぢやありませんか」――
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」
すると、間もなく診察室の方から急ぎ足で出て来た房一は、道平を見るなり、
「ひどい傷だねえ!」
徳次はいつのまにか腕組みをしていた。あのあてずつぽうな、そゝつかしい、力りきんだ様子が現れていた。
庄谷はあの冷笑するやうな白眼で、物好に訊きたがる人に答へた。
さう答へながら、房一はふいに、競馬場で会つた相沢のことを、そのとき彼が何だか意味ありげに云ひのこして去つた言葉を思ひ出した。
「せんせいですか」
「あれから――あんたに鮒をとつて上げようと思つて、今さつきまで淵に附いとつたんだが、たつたこれつぽちきり獲れなくてね。上げるといふほどの物ぢやないけんど――」
「あゝ、さうか。ふうん」
「あゝ、さうだつた。なあんだ!」
房一はその玄関土間に足を踏み入れて、
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